2020年春からのANA北米・アジア線の路線とスケジュールの予想

前のエントリーでは、2019年10月時点の成田および羽田からの北米線とアジア線のスケジュールを確認した上で、2020年春の羽田国際線の拡大時にはどのような変化が想定されるかについて書きました。このエントリーでは、具体的に2020年春にどのように路線・スケジュールが変わっていくかについて考えてみます。

アメリカ線

羽田の国際線増枠に伴い、アメリカ線はANAとJALへそれぞれ6枠与えられることになりました。ANAの6枠分について行き先を考えてみます。

現在のANAの羽田からのアメリカ線は、昼間時間帯でニューヨーク、シカゴ、ホノルル。深夜早朝の時間帯でロサンゼルス線があります。ANAは成田からアメリカ西海岸への路線を多く飛ばしていますが、現状羽田は深夜早朝のロサンゼルス線のみというのが興味深いです。これが、2020年の春からはどうなるかですが、基本的な考え方は前の記事に書いた通りで、成田のハブ機能を重視しつつ、羽田へ移せるのものは移す、という考え方になるかと想定できます。

ユナイテッドの運航便と合わせて、成田のハブ時間帯に便を残せる行き先で、1日複数便あるものは、積極的に羽田に移す、ということが想定されます。

成田のハブ時間帯に便を残せる行き先で、1日複数便ある行き先に該当するのは、ヒューストン、ロサンゼルス、サンフランシスコへの3便です。この3便は羽田に移管される可能性が高いです。ホノルルも該当しますが、ホノルル便はご存知フライングホヌが就航していて、A380は羽田に移せないので対象外です。サンフランシスコ便やヒューストン便については、それぞれユナイテッドの一大ハブであるため、現在の利用状況によっては成田便も残しつつ、羽田にも追加で就航という形になるかもしれません。もし、ヒューストン便が成田に残るとなると、ニューヨークJFK便やシカゴ便のように、羽田便と成田便をアメリカ側で入れ替えるという運用により、成田発着ともハブ時間帯になるよう調整するものと想定されます。

残る枠ですが、ワシントンD.C.が有力と考えています。ANAのワシントンD.C.便は午前中であり、今は同じ時間帯にヒューストン便がありますが、もし午前中のヒューストン便が前述の通り消滅するか時間が変わるとすると、このワシントンD.C.便は浮いた存在になってしまいます。現状、恐らくはヒューストン便やワシントンD.C.便への乗り継ぎを考慮して、朝着のバンコク便、シンガポール便、ホーチミンシティ便が設定されているので、もしヒューストン便の午前発がなくなるのであれば、このワシントンD.C.便とさらにはバンコク便なども合わせて無くしてしまった方がバランスが良いように見えます。ワシントンD.C.はユナイテッドが成田から撤退してしまうので、ハブ時間帯にワシントンD.C.へ向かう便がなくなってしまうわけですが、ワシントンD.C.が首都であり、ビジネスというよりは政府系の利用が多いだろうことに鑑みると、乗り継ぎ需要はあまり多くないか、アジア側の乗り継ぎ先が限定されているかの可能性が高いと考えます。なので、ANAもワシントンD.C.を成田から羽田に移管させることが、乗り継ぎ需要にあまり影響を与えないのではないでしょうか。

残りの2枠が悩ましいところですが、アメリカ側の都市がユナイテッドの拠点ではないためにアメリカ側からの乗り継ぎ需要があまり多くない都市が羽田へ移管しやすいとすると(ユナイテッドの拠点都市にはユナイテッドの会員が多く、ユナイテッドと提携しているANAに乗ってアジアへ出かけるという需要が多いものと考えられる)、シアトルとサンノゼあたりでしょうか。

というわけで、ANAの羽田増枠分のアメリカ線の就航先は、
• ヒューストン
• ロサンゼルス
• サンフランシスコ
• ワシントンD.C.
• シアトル
• サンノゼ
と予想します。このうち、サンフランシスコあたりは移管ではなく、成田に残しつつ、増便となる可能性も十分あります。また、サンノゼは微妙ですね。東京からのサンノゼ便はANAのみなので、成田でも十分競争力があるかもしれず、羽田へ持ってくるのはもったいないかもしれません。他の候補としては、ユナイテッドのハブがあるもののANA運航としては未就航の
• デンバー
• ニューアーク
あたりへ新規就航の可能性もありますが、ニューアークはユナイテッドが成田に加えて羽田へも就航することから可能性は低いと思います。デンバーはありうるかもですね。
他には東京からの直行便が就航していない大都市への就航可能性もあるかもしれません。
• フィラデルフィア
• フェニックス
• オースティン
あたりは同じスターアライアンスのルフトハンザがドイツから就航しているあるいは就航していたような都市なので、わずかながら可能性があるでしょうか。

新規分のスケジュールですが、ヒューストンやワシントンD.C.など東海岸線の場合は、ニューヨーク線やシカゴ線と同様のスケジュールになるでしょう。今の成田のヒューストン便やワシントンD.C.便は、シンガポール便やバンコク便などとの乗り継ぎが考慮されていますので、羽田に移管するとしても、その乗り継ぎを考慮したスケジュールになると思われます。羽田のニューヨーク便やシカゴ便と同じ時間帯とすることで、シンガポール便やバンコク便との接続も良好になります。

一方、サンフランシスコやシアトルなど西海岸線の場合は、今の羽田発着のバンクーバー便と近しいスケジュールになると思われます。この時間帯とすることで、既存の中国線、シンガポール線やバンコク線などとの乗り継げが良好になります。それに、成田線との差別化という意味では夜8〜10時台の出発とすることで、東京で定時まで働いた後に出発するという需要を拾うことができます。
ロサンゼルス線についても、同様に夜発、夜着の可能性も十分ありますが、すでに夜発の便が存在するので、思い切って昼前に羽田発の便を用意してくると予想してみます。今のニューヨーク線やシカゴ線に近い時間帯の出発です。こうすることにより、羽田に早朝にアジアから到着する便からの乗り継ぎを拾うことができるようになります。例えば、シンガポールからの乗り継ぎでいうと、既存の
• シンガポールを早朝に出て、午後に成田で乗り継ぎ、昼にロサンゼルスに到着
• シンガポールを午前に出て、夜に羽田で乗り継ぎ、夕方にロサンゼルスに到着
というスケジュールに加えて、
• シンガポールを夜に出て、午前に羽田で乗り継ぎ、早朝にロサンゼルスに到着
というパターンが出来上がることになります。このような多様にスケジュールの選択肢を用意してくる可能性があります。

中国線

羽田国際線のアジア線の増枠は、ANA、JALともに中国2枠、インド0.5枠でした。ANAの場合、羽田からの中国路線について、前の記事で見た通り、北京線や上海線は北米線との乗り継ぎを意識したスケジュールを一部用意しています。上海線は、ニューヨーク便やシカゴ便との乗り継ぎを考慮していると思われる、夜22時台発や朝5時台着の便まで用意しています。このことから、中国線の増枠分は日本人のビジネスユーザをターゲットにした新規路線に充てる可能性が高いでしょうか。成田からの移管(あるいは、成田に加えての増便)で考えると、成田線ですでにB787やB767の機材を使用している、
• 大連
• 青島
あたりが有力でしょう。
成田にも就航していない完全な新規路線で、金融都市としての発展が目覚ましい
• 深圳
という可能性もあるかもしれません。
ただし、中国側との調整により、就航先の空港が縛られるかもしれません。中国側は、北京3便と上海1便ということだそうで、日本側の就航先も北京や上海に限定される可能性があります。この場合は、北京便や上海便のさらなる増便になります。

インド線

インド線は、成田からの移管になるでしょう。現在のANAのインド線は、デリーとムンバイ、さらにはこの10月からはチェンナイが追加されます。これ以外の就航地で新規路線というのは考えにくく、また成田線に加えて羽田線に就航するほどの需要はないと思われます。
このうち、デリー線は、北米線との乗り継ぎを考慮した時間帯となっていますので、羽田への移管の可能性は低いと思われます。そして、チェンナイ線は成田への就航する前ですが、この成田線が毎日運行とならないことから推察できるように需要はそれほど強くないと思われるので、この路線を羽田に持ってくるとは考えづらいでしょう。
というわけで、インド線は、
• ムンバイ
の可能性が高いです。
スケジュールですが、インドの昼間時間帯の枠は0.5枠であるので、この点を考慮しないといけないです。使いやすさの観点と機材の効率的な運用を考えると、
• 羽田午前発、羽田早朝着
• 羽田深夜発、羽田夜着
のどちらかでしょうが、成田の時間帯が成田午前発、成田朝着であることから、このままスライドして、羽田午前発、羽田早朝着となると思います。もしかすると、新規のアメリカ西海岸線が夜発夜着で、ムンバイ線も羽田深夜発、羽田夜着とすることで、乗り継ぎ需要を取りに行く可能性もあります。

その他のアジア線

さて、以上で、割り当てられた北米線とアジア線の昼間の枠については以上ですが、新規就航、増便の可能性があるのは昼間だけではありません。深夜早朝枠があります。この深夜早朝枠を航空会社がどれくらい自由に使えるものなのかを私は分かっていませんが、制約なく考えると、深夜早朝枠での新規就航、増便がありそうな路線には、下記のような就航先が考えられます。
• ホーチミンシティ(新規、成田からの移管)
• 北京首都(増便)
• マニラ(増便)
• シンガポール(増便、成田からの移管)
• ハノイ(増便)
• 台北桃園(新規)
ホーチミンシティやシンガポールについては、もしワシントンD.C.線やヒューストン線が成田から羽田に移った場合、成田でこの2便への接続するように運行されている成田朝着のシンガポール、バンコク、ホーチミンシティ線は宙に浮いてしまいます。これらは、羽田に移管されるか、廃止になるかの可能性が高いです。バンコク線はタイからの来日客が多いことからか、すでに羽田に3便が設定されていることから、これ以上の増便はなかなか難しいでしょうが、ホーチミンシティ便の羽田就航やシンガポール便の増便があり得るでしょう。
ワシントンD.C.便やヒューストン便がニューヨーク線やシカゴ線と近い時間帯になるとすると、羽田に早朝着、深夜発となるようにアジア便を設定することで乗り継ぎが便利になります。上に挙げた6つの都市のうち、ホーチミンシティ、北京、マニラは十分ありうるのではないでしょうか。

羽田発着スケジュールの予想

これまでの話を踏まえて、2020年春からの羽田発着のスケジュールの予想を考えてみました。現在のスケジュールをもとに、新規就航・増便分を加えてみます。

時間帯 羽田着 (アジア発) 羽田発 (アメリカ行) 羽田着 (アメリカ発) 羽田発 (アジア行)
05 上海浦東
バンコク
香港
ホーチミンシティ
マニラ
北京首都
ロサンゼルス
06 シンガポール
ジャカルタ
07
08 ハノイ
香港
ソウル金浦
09 ソウル金浦 北京首都
マニラ
広州
10 ニューヨークJFK
シカゴ
ジャカルタ
上海虹橋
台北松山
大連
青島
11 ヒューストン
ワシントンD.C.
ロサンゼルス
バンコク
シンガポール
ムンバイ
12 北京首都
上海浦東
13 サンフランシスコ
(ニューアーク)
台北松山
14
15 ソウル金浦 サンフランシスコ (シカゴ)
(ロサンゼルス)
(ワシントンD.C.)
16 ジャカルタ (ワシントンD.C.) ソウル金浦
17 バンコク
上海虹橋
台北松山
(シカゴ)
(ニューアーク)
ホノルル 北京首都
18 (ロサンゼルス) バンクーバー
サンフランシスコ
シアトル
サンノゼ
ロサンゼルス
上海浦東
19 シンガポール
北京首都
広州
ヒューストン
ワシントンD.C.
20 マニラ
香港
台北松山
シカゴ ソウル金浦
21 バンクーバー
サンフランシスコ
シアトル
サンノゼ
ニューヨークJFK
22 バンコク
クアラルンプール
ソウル金浦
ホノルル ジャカルタ
上海浦東
23 ロサンゼルス クアラルンプール
00 バンコク×2
シンガポール
香港

斜字 はユナイテッド航空運行便、そのうち()は2020年の春の羽田国際線拡張時に就航すると発表されている路線です。

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