ANAの北米・アジア線の現状把握と展望

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2020年に羽田の国際線の発着枠が拡大しますが、このANAおよびJALへの配分が2019年9月2日に発表されました。
ANAへは新たに、アメリカ線6枠、中国線2枠、オーストラリア線、ロシア線、イタリア線、スカンジナビア線、トルコ線を各1枠、インド線を0.5枠(深夜早朝枠と合わせて1枠)が配分されました。
この記事では、配分を受けてANAの路線がどのように再編成されていくかを、北米線とアジア線に着目して考えてみたいと思います。

2019年10月時点でのスケジュール

どう再編成されていくかを考えるにあたり、まずは2019年9月時点での成田および羽田発着の北米線、アジア線のスケジュールを見ておきます。
ポイントとしては、ANAが公式に謳っている、北米とアジア間の乗り継ぎ客をターゲットとしたデュアルハブ戦略です。このハブ戦略がどのようにスケジュールに反映されているか、わかりやすいようアジア発東京着、東京発アメリカ行、アメリカ発東京着、東京発アジア行の4列で並べて、成田と羽田で見てみることにします。なお、デュアルハブ戦略において、北米線のパートナーであるユナイテッド航空のスケジュールも重要であるため、合わせて記載します。

成田発着

時間帯 成田着 (アジア発) 成田発 (アメリカ行) 成田着 (アメリカ発) 成田発 (アジア行)
06 ホーチミンシティ
ヤンゴン
メキシコシティ
07 ムンバイ
プノンペン
08 バンコク
シンガポール
09 青島
上海浦東
10 プノンペン
大連
杭州
厦門
香港
11 ワシントンD.C.
ヒューストン
ムンバイ
ヤンゴン
12 デリー
13 台北桃園 ニューアーク
14 シンガポール
瀋陽
北京首都
上海浦東
武漢
広州
サンフランシスコ
ヒューストン
シカゴ
ホノルル
ホノルル
上海浦東
15 バンコク
ホーチミンシティ
クアラルンプール
ジャカルタ
マニラ
成都
香港
ロサンゼルス
ロサンゼルス
サンフランシスコ
サンノゼ
シアトル
ワシントンD.C.
((ワシントンD.C.))
ニューヨークJFK
ヒューストン
((シカゴ))
16 上海浦東 ロサンゼルス
((ワシントンD.C.))
ニューヨークJFK
ヒューストン
メキシコ
ロサンゼルス
デンバー
ホノルル
ホーチミンシティシティ
17 大連
青島
杭州
ロサンゼルス
ロサンゼルス
サンフランシスコ
サンフランシスコ
サンノゼ
ニューアーク
シカゴ
((シカゴ))
バンコク
デリー
クアラルンプール
シンガポール
ジャカルタ
マニラ
成都
広州
台北桃園
18 シアトル
デンバー
ホノルル
バンコク
ホーチミンシティ
シンガポール
瀋陽
北京首都
上海浦東
武漢
香港
19 厦門
20 香港 ホノルル
21 上海浦東 ホノルル

斜字 はユナイテッド航空運行便、そのうち(())は2020年の春の羽田国際線拡張時に運休(羽田へ移管)すると発表されている路線です。

このように時間帯別に並べると一目瞭然ですが、ANA(およびユナイテッド)の北米線は、成田発は16〜18時台、成田着は13〜16時台に集中しています。これにハブ戦略が現れていて、各方面へのアジア線へ待ち時間少なく乗り継げるようにしています。この時間帯から外れる例外は、

  1. ANAのワシントンD.C.およびヒューストン行きが11時台である
  2. ANAのメキシコシティからの便が早朝着である
  3. ANAのホノルル行きが夜の時間帯にある
    くらいです。これらが例外的なのは、ハブとなっている時間帯にスケジュールを合わせようとすると、北米側で駐機させておく時間が長くなってしまい、機材の運用効率が悪くなってしまうためと考えられます。また2のメキシコシティ線では、メキシコシティの標高が高いために離陸の際に少しでも浮力が得られるように空気の密度の高い深夜発にする必要がある、3のホノルル線はそもそもメインターゲットが日本人客なので乗り継ぎをあまり考慮する必要がない、といった事情があると想定されます。

一方で、アジア線は北米との乗り継ぎ用に組まれているスケジュールと日本人客が便利なように組まれているスケジュールとがはっきりと分かれています。例えば、同じインド線でも、デリー行きは夕方成田発昼成田着となっていて北米線との乗り継ぎが考慮されていますが、ムンバイ行きは朝成田発朝成田着で乗り継ぎは考慮されていないです。中国線も朝成田発夕方成田着の行き先と夕方成田発昼成田着の行き先とに分類されています。また、プノンペンやヤンゴンは日本人客向けのスケジュールです。

このように、ANAの成田空港の北米線やアジア線は、もはや乗り継ぎ需要を想定したスケジュールが中心で、日本人客向けが一部あるというような構成です。2020年春に羽田国際線が拡大するとさらにこの傾向は強まっていくと思います。これは決してネガティブなことではなく、羽田との棲み分けができるという意味では良いことではないかと思います。

羽田発着

時間帯 羽田着 (アジア発) 羽田発 (アメリカ行) 羽田着 (アメリカ発) 羽田発 (アジア行)
05 上海浦東
バンコク
香港
ロサンゼルス
06 シンガポール
ジャカルタ
07
08 ハノイ
香港
ソウル金浦
09 ソウル金浦 北京首都
マニラ
広州
10 ニューヨークJFK
シカゴ
ジャカルタ
上海虹橋
台北松山
11 バンコク
シンガポール
12 北京首都
上海浦東
13 サンフランシスコ
(ニューアーク)
台北松山
14
15 ソウル金浦 サンフランシスコ (シカゴ)
(ロサンゼルス)
(ワシントンD.C.)
16 ジャカルタ (ワシントンD.C.) ソウル金浦
17 バンコク
上海虹橋
台北松山
(シカゴ)
(ニューアーク)
ホノルル 北京首都
18 (ロサンゼルス) バンクーバー 上海浦東
19 シンガポール
北京首都
広州
20 マニラ
香港
台北松山
シカゴ ソウル金浦
21 バンクーバー ニューヨークJFK
22 バンコク
クアラルンプール
ソウル金浦
ホノルル ジャカルタ
上海浦東
23 ロサンゼルス クアラルンプール
00 バンコク×2
シンガポール
香港

斜字 はユナイテッド航空運行便、そのうち()は2020年の春の羽田国際線拡張時に就航すると発表されている路線です。

羽田の北米線、アジア線は、主として日本人客+日本への客をターゲットにしているようですが、一部北米とアジア間の乗り継ぎを考慮したスケジュールとなっています。例えば、上海浦東行きが、18時台と22時台に組まれていますが、18時台は14時台に到着するサンフランシスコからのユナイテッド便、22時台は20〜21時台に到着するシカゴ便やニューヨーク便からの乗り継ぎが想定されているように見えます。また、バンコクやシンガポール、香港などの深夜便は主としては日本発着で時間を効率的に使いたいユーザ向けの設定でしょうが、シカゴ便やニューヨーク便との乗り継ぎも比較的良好です。

ロサンゼルス便は羽田深夜発、羽田早朝着となっており、時間を効率的に使えるという観点に加えて、アジアへの乗り継ぎという観点でも、午前中の羽田発アジア行き、夕方から夜のアジア発羽田着の便が多く設定されているので、比較的短時間で乗り継げて便利です。

ANAの中期計画でも、羽田の朝と夜の時間帯をハブの時間帯と謳っており、成田のハブ機能を補完する役割として考えているようです。成田のハブの時間帯である午後〜夕方と時間帯がずれていることも、利用者の利便性を考えると良いことです。例えばニューヨークからシンガポールに向かうのに、ニューヨーク午前に出て、東京を午後に乗り継いで、シンガポールに夜遅くに着くというパターンと、ニューヨークを午後に出て、東京を夜に乗り継ぎ、シンガポールに早朝に着くというパターンの2通りを提供できているわけです。

ANAの羽田発着は、日本発着の利用客を最優先にしつつも、うまくスケジュールを長繊維することで、北米とアジアの乗り継ぎ客にも対応しているということが言えます。恐らくは、この傾向を2020年春の国際線の発着枠拡大後も踏襲するものと想定できます。

2020年春の羽田国際線の発着枠拡大時に想定される北米線とアジア線の変化

すでに、ユナイテッドは、2020年春以降の成田線と羽田線に関するアナウンスを行っています。上の表にも反映済みですが、成田線からはシカゴ線とワシントンD.C.線が羽田へ移管し、ロサンゼルス線とニューアーク線は成田線はそのままで、追加で羽田にも就航することになります。

ANAが2020年春に、どの路線を羽田に就航させるかを決めるにあたり考慮しないといけないこととして、
• 羽田の北米・アジア線で増枠されるのは、アメリカ線6枠、中国線2枠、インド線1枠(うち0.5枠は深夜早朝枠)のみであることから、羽田にハブ機能を完全に移すことができず、成田の乗り継ぎネットワークを出来るだけ維持する必要があること
• 羽田の増枠に伴い、特にヨーロッパ方面への新規就航が相次ぐために、アメリカ線の6枠を新規就航に充てる余裕はあまりなさそうなこと
があります。このような制約を考えると、ANAが羽田へ就航させるアメリカ線がぼんやりと見えてきます。すなわち、ユナイテッドの運航便と合わせて、成田のハブ時間帯に便を残せる行き先で、1日複数便あるものは、積極的に羽田に移す、ということが想定されます。

また、アジア線も変化が想定されます。上述のように、羽田国際線のアジア線の増枠は、中国線2枠、インド線1枠(うち0.5枠は深夜早朝枠)のみですが、これは昼間時間帯の話です。深夜早朝枠は増便や新規就航の可能性はあります。

一方で、成田の新規就航や増便もありうるかもしれません。アメリカ線の多くが羽田へ移管されることにより、北米・アジア間の乗り継ぎの集中時間帯である午後・夕方の成田の枠が大きく空くはずです。この空いた枠を利用して、ANAが新規就航や増便、あるいは現在は乗り継ぎ時間帯ではない便を時間変更して乗り継ぎ対象の便にする、といった変更を加える可能性は十分にあります。

では、具体的にどのような変化が起こるか、について次の記事で書いてみたいと思います。

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